北海道の思い出5 [学生街の四季]
今までの話は、次のリンクからご覧ください。
千恵子は千歳から戻ってくると、助手席に置いた包みを持って車を降りた。
店に入ると、壁にかかった時計は11時30分を回って、ぽつぽつお客さんが入り始めたところだった。
「妙子さん、ごめんね、ありがとう。」
「あっ、ちーちゃん、お疲れ様。」
千恵子は、妙子に挨拶もそこそこに厨房に入ると、業務用の冷凍庫を開けて、包みをしまった。
厨房からでてエプロンを付けていると、妙子が隣に立った。
「なぁーんだ、ちーちゃん千歳まで行って、LeTAOのチーズケーキ買ってきたの!?
あっ、そうか、健作さんのお土産ね!?」
「えっ、ええ・・・」
「あと・・・何時間かすると白馬に乗った王子様の登場ね!」
「あっ、いや、そんなんじゃないって!!」
千恵子は、頬を赤らめると、厨房に入った。
ランチタイムの忙しい時間が過ぎ去ると、お客さんは途切れて、ようやく一息つけるようになった。
「妙子さんコーヒーでも飲む?」
「うん、一息入れようか。」
厨房でコーヒーを淹れると、ポットとマグカップをもってテーブルの上に置いた。
千恵子は、マグカップにコーヒーを注いで壁の時計を見上げると、2時を回っていた。
妙子は、そんな千恵子を見て口を開いた。
「今頃健作さんは、どこら辺走ってるんだろうね。」
「ええ、9時にホテルを出て、狩勝峠から富良野に抜けて、道央道で来るって行ってたから、順調に来れば札幌辺りかな?」
この日の午後の来店客はほとんど無く、時間はじりじりと過ぎていった。
気がつくと、柱の時計は4時を回っている。
千恵子と妙子は、テーブルの上に置いた健作の携帯を見つめて押し黙っている。
「まさか事故にあったりしてないだろうねぇ。」
妙子がぽつりと言うと、千恵子ははっとしたように立ち上がった。
「あ、ちーちゃん、大丈夫だよ。きっと途中でどこかよってるんだろ。
フェリーが出るのは18時45分だから、まだまだ時間あるじゃん。」
千恵子はスマホを取り出すと、高速道路の交通情報を調べ始めた。
「特に渋滞や事故はないみたいね。」
ほっとするようにつぶやいた。
いたずらに時間は過ぎていき、千恵子は店内を行ったり来たり歩き始めた。
妙子も心配そうにそんな千恵子を見ているしかなかった。
しばらくすると妙子は席を立ち外に出ると、暖簾をはずして「本日休業」という札を扉にかけた。
壁の時計が18時30分を指して、妙子が立っている千恵子を見上げると、目にはうっすら涙がたまっている。
「ちーちゃん、ほら座んなさい。」
千恵子は動こうとしないので、妙子は立ち上がると、千恵子の肩に手を添えて座らせた。
千恵子が座るのと同時に携帯が鳴りだした。
二人ははっと一瞬驚いたように身体を震わせると、千恵子は手を伸ばして携帯を取り上げ、応答ボタンを押して耳に当てた。
「もしもし、ちーちゃん!?」
「健作さんなのね・・・千恵子です・・・。」
健作の声が携帯から飛び出すと、千恵子は安心したのか気が抜けて、その後は声にならなかった。
「ちーちゃん、ごめん。2時過ぎに江尻西インターの手前でエンジンが壊れて動けなくなっちゃった。
車は動かないからフェリーに乗せられなくて、レッカー呼んで東京まで運んでくれる陸送業者さんのところまで運んでもらったんだ。」
「よかった、健作さんが事故にあったんじゃないかと、気がきじゃなかったのよ。」
「本当にごめんね。連絡しようにも僕の携帯はちーちゃんのところだし、レッカーやさんや陸送業者さん、東京の修理工場に連絡取ったりで、思うように連絡できなくて。
それで今フェリー埠頭に着いたところなんだけど、明日、明後日は満席で乗れないみたいなので、予定通りこのまま乗って帰ります。
どうしてもちーちゃんに約束した3つの楽しみを実現するために、日程を変更しようとしたんだけど、本当にごめん・・・」
「ううん、いいのよ。健作さんが元気なら。」
「ありがとう、もう乗船しなくちゃいけないから、また改めて連絡します。」
電話が切れると、千恵子は崩れるように椅子に座り込んで、ひとしきり泣いた。
妙子は、厨房から日本酒のビンとコップを持ってくると、テーブルにおいて千恵子の隣に座り、千恵子の肩にやさしく手を回した。
「ほら、一緒に飲もう。」
「う、うん、でもお客さんが来るかも・・・」
「大丈夫、今日はもうお休みよ。」
妙子はコップを千恵子と自分の前に置くと、日本酒を注いだ。
「ちーちゃん、良かったじゃない。
もし健作さんが順調にここにきて携帯を持って帰ったら、それで終わりだったかもしれないよ。
これでまたご縁ができたんだから、良しとしなさい。」
「うんありがとう、妙子さん。」
今日はYHUTAじいさん、獏さんと、ふじたしょうこさんの個展を拝見しに恵比寿まで行ってきました。
またその様子は改めてアップさせていただきます。
新しいレンズを付けたD300Sと、白黒フィルムを入れたF3を持ち出したのですが、こんなに写真を撮るのが難しいと感じたことは久しぶりで、記録的な写真を数枚撮っただけで帰宅しました。
その後マイスタジオで何枚か撮ってみたのですが、どんなレンズでどんな写真を撮ったのかは、改めてアップします。
次の北海道行はいつになるのか・・・早くラーメン屋さんに行かなければ!
妙子さん&千恵子さん視点で駅員3さんの裏視点を覗くのも面白いですよね^^
by ちょいのり (2013-10-15 02:13)
おはようございます。
昨日はありがとうございました・・・ちょいのりさんひがんでました(笑)。
by YUTAじい (2013-10-15 04:25)
おはようございます
そんなドラマに・・・思い出だけが残りましたね!
by すー (2013-10-15 04:27)
お早う御座います☆
昨日は有難うございました~♬
写真が楽しみです~(^w^)
by 獏 (2013-10-15 05:54)
マイスタジオが私も欲しくなちゃいました。ナミビビが撮れるサイズで良いのですが。。。探してみます。
by ナビパ (2013-10-15 06:06)
しょうこちゃんの個展に行ってくれたんですね。
ありがとうございます。
写真楽しみにしています。^^
by hatumi30331 (2013-10-15 07:20)
細かなしぐさや心の動きの描写ですね^^
ブログ仲間のみなさんとカメラ散歩いいですね。
新しいレンズが気になります。
by orange (2013-10-15 07:52)
もう次の北海道行きを計画なんでしょうか、千恵子さんが待っていますね
私たちは、午後の便で八重山諸島へ行ってきます、台風26号に向かって
行くようですが、現地の天気は良いようです
by koh925 (2013-10-15 08:30)
駅員3さん、
考えてみれば、当然の展開でしたか?
ちーちゃんと会わない展開とは、ちょっと、驚きでした。
次回が楽しみになりました。
by kiyo (2013-10-15 08:51)
YUTAさん達としょうこさんの所へ行かれたんですね。
この日は大変にぎわったようですね。
by 馬爺 (2013-10-15 09:31)
現実と創作が上手くコラボしていますね(^^)ニコ
by johncomeback (2013-10-15 11:04)
先日は応援に駆けつけてくださって
ありがとうございました♪((*´U`)ノ
ナイアガラは次回に持ち越し・・・!残念。
ちーちゃんとの恋の行方はいかに!?\(^o^)/
時列が違うとしても、智子さんが拗ねちゃうかも!?笑
ねね
by 今造ROWINGTEAM (2013-10-15 14:19)
今晩は。
こちら宮座でした。
by 夏炉冬扇 (2013-10-15 18:02)
健作さんと千恵子さん、会えなかったんですねぇ(*_*)
でも携帯を取りにまた北海道に健作さんが行かなきゃですもんね(^-^)
by ニッキー (2013-10-15 18:15)
健作さんは、ちーちゃんとずっと繋がっていたくて、わざと携帯を置いてきたのかな?!
どんなレンズをお求めになったのか、写真が楽しみですね^^
by 風来鶏 (2013-10-15 19:30)
健作さんの携帯は、どうなるのか?
気がかりです。。。(^▽^)
by なんだかなぁ〜!! 横 濱男 (2013-10-15 21:48)
ちーちゃんと会わないなんて・・・
予想外でした^^
私は12日にふぢたしょうこさんの所へ行って来ました。
by 美美 (2013-10-15 22:41)
一日遅れで味わっています〜残念です。
神様も意地悪ですね〜涙が…何で…???
若かった頃にタイムスリップ〜…フッフッフ
こんなこともあったような・・・無かったような〜と。
by 沈丁花 (2013-10-16 05:27)
一瞬本気でハラハラしました!
by キャスリーン・ケリー (2013-10-16 13:57)
これからのまだ続いて欲しい展開に期待しています。
再び運命の出会いが訪れますように祈って・・・願っています。
by BS大ちゃん (2013-10-17 18:31)
携帯というつながりがある限り,
また二人の出会いがありそうですね.
今後の展開,楽しみです.
by 唐津っ子 (2013-10-18 23:16)