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学生街の四季 第2章《夏》 8 [学生街の四季]

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学生街の四季 第2章《夏》 7

是非次のYoutube を聴きながらお読みください。

健作は、耳がつんとしてきたので窓の外を見ると、それまで蒼穹の空に雲海しか見えなかったが、いつのまにか群青色の海に手が届きそうなくらいまで高度を下げてきている。

シートベルトの着用サインが点灯すると、まもなく着陸するとの機内アナウンスがあった。
倒していた座席を元に戻してシートベルトを付けると、修が健作に話しかけてきた。

「いよいよだなぁ、健作!! 俺さぁ、沖縄初めてなんだ。超楽しみ。」
「あ、ああ・・・」
健作はどこか遠くを見つめているような顔をして、気のない返事をした。

「なんだ健作、心配事でもあるのか? 元気ないじゃないか。」
「・・・えっ、そんなこと無いよ・・・」
「あー、わかった。 典子さんのお父さんが迎えに来るって言うんで、緊張してるんだろう!」
「ち、違うよ。」健作は、ちょっとむくれたように返事をした。

「ははは、わかった、わかった。まぁそういうことにしておこう。」

そんな話しをしているうちに、「コン」という軽い振動が伝わると、逆噴射のゴォーというエンジンの響きとともに急減速した。
やがて機内は静寂を取り戻すと、機体は大きくカーブして誘導路を進み始めた。

窓の外に目をやると、海上保安庁、航空自衛隊の格納庫の前を通り過ぎて、ターミナルビルが見えてきた。
やがて機体は止まると、乗客たちは一斉に手荷物を降ろす為に立ち上がった。

通路側に座っていた健作は、ベルトを外して席を立つと頭上の荷物棚の蓋を開けて智子と健作の荷物を取り出して二人に渡した。

「健作さん、ありがとう。いよいよだね!!」智子は、元気の無い健作を励ますように声をかけたが、健作は相変わらず浮かない顔をしている。

「さぁ、行こうか。」健作は、足元から楽器ケースを取り上げると、出口へと向かった。
丁寧に挨拶をするキャビンアテンダントに見送られてボーディングブリッジへ一歩踏み出すと、一瞬にしてムッとした熱気に包まれる。

再び空調の効いた快適な空間に入ると、階段を降りて1階の手荷物受取所へ向かいベルトコンベアーの前に陣取った。

無口になってしまった健作に釣られて、修も智子も会話が少なくなってしまった。
やがてベルトコンベアーが動き出すと、健作は、何か思いつめたような顔をして、一心不乱に荷物が出てくるところを凝視している。

やがて三人の荷物が並んで出てくると、三人はそれぞれ取り上げた。

「為せば成る。為さねば成らぬ何事も・・・」とつぶやくと、健作は自分のほほをパンパンとはたいた。
修は、健作の背中をたたくと、
「はは、本番に強い健作君。どうだい、気持ちは落ち着いたかい!?」
振り返った健作の顔には、笑顔が戻っていた。

「さぁ、沖縄が僕達を呼んでいる!!」健作はそう叫ぶと颯爽と出口へと向かった。
健作の後ろでは修と智子が顔を見合わせて笑うと、後につづいた。

到着口の扉を抜けてロビーに出ると、正面で典子は手を振っている。
隣には、背が高くがっちりした男性が立っていた。
ビーサンを履いて、短パンにTシャツからはみ出した手足は、筋肉が盛り上がっている。
髪の毛は潮風で赤茶に焼けていた。

「あれ、典子さんにお兄さんはいたんだっけ?」
修は小さい声で智子にささやいた。
そこに典子は走り寄ってきた。
「健作さん、修さん、ともちゃん、メンソーレウチナー。これがうちの父の聡です。」といって、後ろからついてきた男性を紹介した。

「げっ、兄貴じゃなくてお父さん? 随分若いんだぁ!!」
修は智子にささやくと、智子も修にびっくりしたような目を向けた。

「皆さん、ようこそ沖縄へ。」真っ黒に日焼けした顔に、微笑むと白い歯が印象的だ。
聡は右手を差し出すと、健作も右手を差し出した。
がっしりした手で力強く握手をされて視線を向けられると、健作は心の底まで見透かされているような気になった。
健作は、そんな気持ちを振り払うように力強く握り返した。
「健作です。よろしくお願いします。」
「おっ、君が健作くんだね。典子から話は聞いてるよ。君の素晴らしいサックスを一度聴いてみたいものだ。」
「今回は、宿泊先をはじめ色々とお世話になりありがとうございます。機会があったら、俺のサックス是非きいてください。」
「ああ、そうさせてもらうよ。君が修君かな、よろしくね。」聡は修と握手した。
「私が智子です。今回はお世話になりますが、よろしくお願いします。」
智子は右手を差し出すと、聡は軽く握手した。
「智子さん、いつも典子が色々とお世話になって、ありがとう。
それじゃあ、荷物を車に積んで出発しようか。

一同は駐車場へと向かった。

 

今日は早朝から夕方までボーイスカウト講習会に奉仕していたため、皆様方のところにお邪魔できず、申し訳ありません。
講習会終了後は、12月2日に谷保天満宮で開催される旧車祭の申し込みなどがあり、66食房さんにお邪魔しました。
皆さん、よろしかったら、次のイベントは12月2日です。
100台以上のクラシックカーが勢ぞろいしますので、よろしかったらお越しください。


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銀狼

谷保のイベントは是非ともお伺いしたいです!^^
by 銀狼 (2012-10-08 02:15) 

すー

おはようございます

場面が頭の中で映像のように浮かびました。
by すー (2012-10-08 05:16) 

ソニックマイヅル

おはようございます。本日は山に出掛ける為ご挨拶のみとさせて頂きます。またよろしくお願いいたします。m(__)m
by ソニックマイヅル (2012-10-08 05:34) 

YUTAじい

おはようございます。
了解しました。
by YUTAじい (2012-10-08 06:52) 

rtfk

谷保天満宮で旧車ですか!!
ぜひお邪魔したいです☆☆☆

by rtfk (2012-10-08 06:57) 

てんてん

沖縄のお父さんに会ってみたくなっちゃいました^^;
100台以上のクラシックカーですか~
行きたいな~♪
by てんてん (2012-10-08 07:55) 

koh925

谷保天満宮は近いので、見に行きたいと
思っています
by koh925 (2012-10-08 11:07) 

haku

いよいよウチナーですねぇ♪
自分も行きたくなります~ ^m^
by haku (2012-10-08 11:19) 

ニッキー

あぁ、飛行機に乗って私もどこかに行きたいです(^^♪
行くとしたら、やっぱり南の島がいいなぁ^m^
by ニッキー (2012-10-08 12:25) 

momiji

沖縄は自然も人も、音楽も好きだなー(^^)
by momiji (2012-10-08 13:44) 

美美

健ちゃんどうなるのかな~^^

by 美美 (2012-10-08 18:38) 

kiyo

沖縄編、絶好調ですね。
若いお父さんというのも良いですね。
健作くんのサックス聴きたいですね。
彼のモデルは駅員3さんですか?
by kiyo (2012-10-08 20:11) 

さきしなのてるりん

沖縄の県歌とも言われる芭蕉布。5年ぶりに聞きました。三線を弾いていた時期に集めた沖縄のCDが今は埃かぶってます(涙)。
by さきしなのてるりん (2012-10-09 07:51) 

sig

やっと涼しくなった夕方の窓から、沖縄の暖かい風が吹き込んできました。
by sig (2012-10-09 16:58) 

風来鶏

携帯がなかった時代、女の子の家に電話してお父さんが出ると、さすがに緊張しましたね^^;)
by 風来鶏 (2012-10-10 00:04) 

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