学生街の四季 第2章《夏》 4 [学生街の四季]
学生街の四季の過去のリンクは、次のページからご覧ください。
⇒1~22のリンクページ
⇒学生街の四季 第2章《夏》 1 ⇒学生街の四季 第2章《夏》 2
⇒学生街の四季 第2章《夏》 3
☆★☆★☆よろしければ上のYouTubeを聴きながらお読みください★☆★☆★
「さぁて、最後のチューニングだ。
B♭をくれるかな。」
健作はキーボードのタダシに向かって声をかけた。
皆が思い思いにチューニングすると、健作は大きく息を吸った。
「早苗、いいか!?」
「はいっ!!」
早苗は小さく、しかし力強く答えた。
健作はメンバーをぐるっと見渡すと、顔に緊張感が溢れている。
どんなに練習しても、最初の第一声は緊張するものだ。
「よしみんな、そろそろいこうか。
リハーサルは最高の出来だったぜ。
でも僕たちはプロじゃない。だから技術では負ける。
でも僕たちは誰にも負けないものを持っている。」
そういうと、健作は右の手のひらで胸を叩いた。
「そうさ、ハートは誰にも負けない。
さぁみんな、今日来てもらった人たちに心で感じてもらって、感動を持って還ってもらおう。」
メンバーは、健作の話に小さくうなずいた。
健作は、袖の係員に合図を送ると、客席は暗転して緞帳が音も無くゆっくり上がり始めた。
センターに健作と早苗が立つと、早苗にピンスポットが当たった。
早苗はそっと目を閉じると大きく深呼吸をして静かに優しく、しかし力強く吹き始めた。
Feel So Good の幕開けだ。
早苗の透き通るような素直な音色は、ワンフレーズで聴くものをひきつけた。
続いて健作にピンスポットが当たると、マイクを持って歌い始めた。
子守唄のように優しく歌い上げると、会場からは割れんばかりの拍手が沸き起こった。
「皆さんこんばんは、STARGAZER ORCHESTRAのコンサートにお越し頂き、ありがとうございました。」
会場からは拍手が沸き起こった。
一呼吸おくと健作は続けてた。
「さて、今日は Chuck Mangion をフューチャーしてお送りしたいと思います。
最初の曲は Feel So Good ! トランペットソロは早苗、ボーカルは私健作がお届けしました。
それでは、今年はオリンピックイヤーでもあることから、レイクプラシッドで開催された冬季五輪のテークソングであるGive It All をお聞きください・・・・」
曲を重ねる毎に盛り上がっていき、いつしか最後の曲になっていた。
「それでは、名残惜しいこのひと時の最後に Land of Make Believe です。
この曲も最初にボーカル入りの Feel So Good が大変受けたので、ボーカル入りでお届けします。
ボーカルは私が、トランペットソロは秀人が担当します。
曲が終わると、割れんばかりの拍手が鳴り止まなかった。
メンバーはみんな晴れ晴れとした顔をしていている。
礼をすると、一度下手の袖にみんなは引き上げたが、拍手は鳴り止まない。
「よし、みんなこれが本当に最後だ。高揚した気持ちを和らげて、静かな感動を持って還ってもらおう!!」
健作はメンバー皆に声をかけて、再び舞台へと上がった。
健作がマイクを取り上げてセンターに立つと、鳴り止まなかった拍手は水を打ったように静けさが訪れた。
「皆さん、ありがとう。
今宵ひと時、楽しんでいただいたことと思います。
アンコールのこの一曲で高揚した気持ちを和らげて、心地よくこの感動をお持ち帰りいただきたいと思います。
それでは、Bellavia お聴きください。」
再び割れんばかりの拍手が起こった。
しばらく拍手は続いたが、緞帳が静かに下りると客席は明るくなった。
メンバーは控え室に引き上げると、ペットボトルの飲み物で疲れた喉を潤した。
「みんな、今日はお疲れ様でした。
最高の出来だったね。細かい点は、来週の月曜日に反省会をやって今回の演奏会の評価反省をしたいと思うが、ともかく今日はよかったよ。
特に早苗、オープニングのプレッシャーを跳ね返して、よくあんなに素晴らしい演奏してくれたね。」
早苗はチラッと秀人の顔を覗くと、すぐに健作の方に目を向けて頭を下げた。
「ありがとうございました。」
健作は嬉しそうにうなずくと続けた。
「Land of Make Believe の秀人も最高だったね。急な思いつきで、練習時間も取れない中、よくあそこまで仕上げてくれたよ。
正直言って、幕開けのボーカルは前から決めてたけど、『幕開けがボーカルいれたら、最後のトリだってボーカル入れたらいんじゃないか』なんて思いつきを、よくここまで頑張ってついてきてくれたね。
二人だけじゃない、みんなそれぞれの持ち場でベストを尽くしてくれたからこそ、こんな素晴らしいコンサートになったんだと思う。
さて、今日は遅いし楽器を片付けたら解散だ。」
それぞれ皆が楽器を片付けているとにんじんのマスターと中村先生が控え室に入ってきた。
「やぁ健作君、今日は素晴らしい出来だったね。」
そう声をかけてきた中村先生の後ろからもう一人の男性が現れて、右手を差し出した。
「健作君、今日の演奏は魂が揺さぶられたよ。」
健作は、手を差し出しながらどこかで会ったことがあるのに思い出せないもどかしさを感じながら握手した。
「あ、ありがとうございます。」
とその瞬間思い出した。
「あ、あなたはあの時の・・・」
・・・・・・つづく
写真は、僕がまだ20代でステージに上がっていた頃の写真です。
この頃は、いろいろな曲をやりましたが、Belavia は僕の十八番のうちの一曲でした。
チャックマンジョーネ好き好き♬
by thisisajin (2012-07-22 01:20)
うおおおおー!
あの時の人がここで登場してくるのかあ!!!
続き気になるぞーこれw
それにしても台詞以外の、ト書きの部分が特に最高です^^
文で世界観や臨場感が伝わってきましたです^^
by ちょいのり (2012-07-22 01:25)
おはようございます
続くが・・・・次が(^_^)ニコニコ
by すー (2012-07-22 05:01)
おはようございます。
・・・気になりますよ、写真が一番決まってます。
by YUTAじい (2012-07-22 05:53)
お早うございます。
音楽軽快でした。
by 夏炉冬扇 (2012-07-22 07:23)
私も音楽を目指しておりました。^^;
by ソニックマイヅル (2012-07-22 08:48)
大阪から疲れて帰ってきました(笑)
駅員3さんの20代の頃の写真です、さすがに若々しいですね
多才ぶりには驚くばかりです
by koh925 (2012-07-22 08:51)
ついに(^^)・・・盛り上がりますね~♬
続きを非常に楽しみにしています。。。
by rtfk (2012-07-22 09:44)
チャックマンジョーネずっと聴いてなかったです、色々とありがとうございます^^。
by 404 (2012-07-22 09:50)
駅員3さん、
自伝的な要素も大きいのですね。
ますます展開が面白くなってきましたね
sorenisitemo,若かりし頃の写真カッコイイですね。
by kiyo (2012-07-22 10:41)
おおーっ、フルート熱演中!!(^^
by さといも野郎 (2012-07-22 11:30)
会場との一体感!
やはり生のコンサートは良いですよねぇ~♪
Land of Make Believe とて盛り上がるし、
Belaviaも とっても癒されます♪♪
駅員3さん、お得意だったんですね
フルート演奏の姿、カッコいいですねぇ~
by haku (2012-07-22 15:53)
今でも時々演奏をなさいますか?
by orange (2012-07-22 21:29)
ハートは誰にも負けないのフレーズが
若さと強い意志を感じますね。
健作は強いリーダーだと思いました。
by ナビパ (2012-07-22 21:37)
最後の写真、駅員3さんが千手観音のようにベースとフルートを演奏しているように見えてしまいました。
千手ではなく四手ですけどね(笑)
by schnitzer (2012-07-22 21:45)
Feel So Good
70年代フュージョンの懐かしい香りがしますね。
小説は、コンサートの緊張感と盛り上がりが伝わってきます。
いいですね。
by そらへい (2012-07-22 22:14)