東京の坂と橋6・・・面影橋 [東京の坂と橋]
名前 | ふりがな | 別名 | 所在地 | 北緯 | 東経 | 全長 |
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面影橋 | おもかげぱし | 姿見橋 | 新宿区西早稲田 豊島区高田 | 北緯35度42分48秒 | 東経139度42分52秒 | 20m |
面影橋は、新宿区西早稲田と豊島区高田の区界を流れる神田川に掛かる橋の一つである。
江戸時代には、『俤橋』とも書いたようだ。
写真は、面影橋北側から、南の新目白通りを望んだところである。
正面の信号のある交差点が、『面影橋』。
交差点右には都電荒川線の三ノ輪橋方面のホームが、左側には早稲田方面のホームがある。
「面影橋」といえば、文学、歌、映画と取り上げられている。
文学では、阿刀田高の「面影橋」。
面影橋を交錯する12人の人間模様を描いたオムニバスである。
フォークソングでは、NSPや六文銭の歌の題名となって有名になった。
君には君の愛する人が いつもそばにいるのに
僕の口づけを受けた 訳がわからない
黄昏迫る面影橋に 見送るつもりできたが
帰したくなくなって さよならが言えない
ルールも友達も約束も みんな捨てて
君を ああ このまま抱いていたい 面影橋で
また、かぐや姫の名曲「神田川」はこの面影橋界隈を舞台にしているといわれている。
その「神田川」を作詞した喜多条忠が書いた小説を映画化した作品が「神田川」。
主演は関根恵子と草刈正雄で、貧しく若い女性と人形劇に情熱を傾ける学生の切なく暗い物語である。
舞台は面影橋界隈であるが、実際の撮影は面影橋からやや下流にある豊橋で行われた。
絵画の世界では、なんと江戸時代までさかのぼる。
安藤広重の名所江戸百景に「高田姿見の橋俤橋砂利場」がある。
江戸名所絵図では、「亮朝院の北、上水の川に長さ12間ほどの『俤橋』が架かる。更に北に小さな『姿見の橋』が掛かっている。」とある。
かつて江戸時代には、神田川(神田上水)にかかる橋を面影橋、神田川の北にある小川にかかる橋を姿見橋といったようであるが、いつの間にか名前が一つになってしまったようだ。
現在の橋はコンクリート製で、川もコンクリートの護岸で固められてしまっているが、春、桜の季節の川に覆いかぶさる桜のアーチは見事である。
神田川は、井の頭公園にある井の頭池を水源として、隅田川まで全長25.5kmの河川だ。
上流部分は寛永6年(1629年)に上水道として開削され、江戸時代は文京区関口の大滝橋より上流を『神田上水』、下流を飯田橋付近までを江戸川、そこから隅田川までを神田川と呼んでいた。
戦後の高度成長期には一時期異臭を放つどぶ川とかしていたが、今では水質も改善され鮎の遡上も見られるという。
この地にはいくつかの伝説が残っている。
一つ目は大田道灌に纏わる『山吹き伝説』である。
大田道灌は歌人としても名を成した戦国時代の武将で、江戸城を築いたことで有名である。
ある日、大田道灌は江戸城を出てこの辺りまで鷹狩にやってきた。
あいにく天気は崩れて雨が降ってきたため、近くにあった農家の若い娘に『蓑』を借りようとしたところ、その娘は、庭に咲いていた山吹の花を一輪切て差し出したが、道灌は意味がわからず怒って帰ってしまった。
その後家臣にその話を伝えると、中務卿兼明親王『七重八重 花は咲けども山吹の みの(蓑)一つだに無きぞわびしき』の歌をかけて、家には蓑はないので貸せないという意を表したのだろうと話された、
村娘さえ知っている歌を知らなかった自分に恥じて、その後は和歌の道に励んだという言い伝えである。
山吹伝説は荒川区町屋、横浜市金沢区六浦、埼玉県越生市などにも伝わっている。
ここには、神田川を少し下った江戸川橋近辺に『新宿区山吹町』という地名が残っている。
二つ目は面影橋伝説である。
戦国時代この地に住んでいた和田靱負という武士の娘於戸姫の伝説である。
夫を夫の友人に殺されるなど度重なる不幸に、亡き夫を思いながら川に身を投げて夫の許に行ってしまった。周辺の人々は於戸姫の心情を思いやって「面影橋」とも「姿見橋」とも名づけたといわれている。
三つ目は怪談『乳房榎』である。
六代目三遊亭円生の三大怪談噺(怪談牡丹灯篭、真景累ヶ淵)としても有名であるが、菱川重信という絵師が、妻を寝取られその上殺されてしまう話である。
舞台は面影橋北にある南蔵院だ。
周辺には江戸時代からの名所旧跡が多く、徳川御三家清水家の下屋敷跡の甘泉園公園、水稲荷神社などがある。
また、都内で唯一残る都電荒川線の『面影橋』停留所は面影橋のすぐ脇にある。
王子電気鉄道の路線として開設されたが、新目白通りが拡幅される前は、専用軌道ではなく、家の軒先を車とともに走っていた。
さてさて、神田川のこと、周辺のこと、伝説のことなど描きたいことは山ほどあり、こんなに話題の尽きない地は珍しいことと思う。
しかし、今回のハイライトは『面影橋』であり、ここら辺で終わりにして、最後に坂について述べておこう。
怪談乳房榎の舞台となった面影橋北側の南蔵院の更に北側に『胸突坂』『宿坂』というのがある。
ここら辺の坂は、また次の機会で述べてみたい。
訪問いただきましてありがとうございました~♪
「面影橋」というネーミングも面白く、興味深く読ませていただきました。
普通っぽく見える橋でも、あちこちの舞台になってるようで、有名なのですね。
桜のアーチ、美しいです~☆
by Mimosa (2008-02-09 18:05)
Mimosaさんこんばんは
niceとコメントありがとうございます。
また時々遊びに来てくださいね~
by 駅員3 (2008-02-09 20:12)
時々、ワタシは、この駅の横を車で通過します^^
でも、一度も立ち寄った事はないので、次回行くときはよ~く観てみます。
by nack (2008-02-09 21:05)
nackさん こんばんは
niceとコメントありがとうございます。
時間があったら新目白通り南側の裏手にある甘泉園公園前のたいやき屋さんで焼き立てを買ってその場で食べてみてください。
by 駅員3 (2008-02-09 22:55)
なかなかの大作で、読みでがありました。
神田川の桜は本当に綺麗ですよね。
江戸川橋とか杉並あたりの神田川は
よく出張の合間に散歩することもありますが、
面影橋はクルマで通過するだけでした。
この記事を機会に立ち寄ってみたいと思います。
しかし、山吹町で鷹狩りなんて今じゃ想像が付きませんな。
by kiyotime (2008-02-10 00:22)
桜のアーチとても綺麗ですね。
面影橋良い名前ですね。
山吹き伝説、面影橋伝説、怪談『乳房榎』も興味深いです。
by (2008-02-10 01:30)
Krausさん、takagakiさん、myuさん、デザイン屋さん、ラガブリコさんおはようございます。
niceありがとうございました。
またご訪問ください。
by 駅員3 (2008-02-10 11:38)
kiyotimeさん、yukitanさん、おはようございます。
niceとコメントありがとうございました。
いままで家の周りの坂を雪かきしていました。
うちは多摩動物公園に近く山坂が多いので、歩く方々が転ばないように雪かきは大変です。
・・・昔は雪かきする前にショートスキーを持ち出して散々遊んだ後雪かきをしていたのですが、最近はそんなに積もらなくなってしまいました。
kiyotimeさん、是非面影橋に行かれたら、以前のblogで触れた新目白通り南側の裏手に有る甘泉園公園前のたいやき屋さんのたいやき食べてみてください・・・甘いものがお嫌いでなければ(^-^)
yukitanさん、神田川は明治通りから江戸川橋辺りまで桜の名所です。
桜の咲くころにぶらぶら散策されると良いかもしれませんね。
3つの伝説はちょっとはしょりすぎてしまったかなと思います。
時間があれば加筆しておきますf^_^;
by 駅員3 (2008-02-10 11:47)
はじめまして「わくわく日記」の惑といいます。九段下で広重の江戸百全部の展示会をやっています。記事にしている人はいないかと検索してこの記事にたどりつきました。自分は今日行ってきたのですが、なかなか興味深く楽しめました。江戸時代の絵葉書みたいな感覚でKotarobsさんも興味もたれるのではないかと初めてながらご紹介する次第です。詳細は拙記事参照ください。
by 惑 (2008-02-10 23:35)
惑さん、黄昏の線路さんこんにちは
niceと訪問ありがとうございました。
by 駅員3 (2008-02-11 18:04)