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学生街の四季 3 [学生街の四季]

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「ありがとうございました。ここで10分間の休憩にします。」と健作が告げると、会場の照明が戻ってきた。

会場が見渡せるようになるとほぼ満席で、外の寒さを吹き飛ばすような熱気がむんむんとしている。
テーブルの上には、来られたお客さんの注文した軽食とビールのグラスが載っていた。

12.jpg会場は30人も入ればいっぱいになるようなライブハウスで、ステージの広さは普通の家のリビング程度の広さしかない。
健作率いる STARGAZER ORCHESTRA は、アルトサックス2人、テナーサックス、バリトンサックス各1人、トランペット3人、トロンボーン3人、ギター1人、ベース1人、ドラムス1人の合計13人と少人数でやっているので、誰かひとりかけても演奏に差しさわりが出てくる。
今回はフルメンバーが参加していた。

楽屋に戻った健作たちは、スチール椅子に座って、ペットボトルのミネラルウォーターを飲んでいた。
修が健作の隣にやってきて座ると、話しかけてきた。
「なぁ健作、智子さんは見当たらないよなぁ?」
「そうかい? 客席は暗くてよく見えないからなぁ。」
「あの典子さんも来てないだろう?」
「あぁ、よくわからないよ。とにかく演奏に集中してるからな。
前半の修のドラムスは、息がぴったり合って、なかなか良かったぞ!」
「そうだな、健作のむせび泣くようなアルトサックスも最高だったぜ。」

健作は壁の時計を見上げると立ち上がった。
「さぁみんな、この調子で後半もばっちり決めようぜ!」

客席が再び闇へと落ちていくと、健作はマイクを握ってピンスポの下に立った。
「皆さん、前半はいかがでしたでしょうか。
今日は、カウント・ベイシーオーケストラをカバーしてお届けしています。
前半は、第二次世界大戦前の所謂オールドベーシーと呼ばれる初期の作品をお届けしました。

皆さんご存知の通り、カウント・ベイシーはピアノ奏者として自身の楽団を率いて、デューク・エリントン、グレン・ミラー、ベニー・グッドマンなどとともに、ジャズ界で一時代を築いた素晴らしい才能の持ち主です。

彼の本名は、ウィリアム(ビル)・ジェイムズ・ベイシーといい、『カウント』は『伯爵』を意味する称号です。
この時代のジャズミュージシャンは、キング・オリバー・・・王様のオリバー、デューク・エリントン・・・公爵のエリントンなどと、あだ名で呼ばれることが多かったようです。

1904年生まれの彼は、母親からピアノを習いました。一時はドラマーを志した頃もあったようです。
アメリカ各地の地方を巡業したり、バンドに入って演奏活動をしたりしていましたが、1935年にカウント・ベイシーオーケストラを結成します。

第二次世界大戦後の不況で一時バンド活動を休止していましたが、1951年・・・これは我が家の車と同い年です・・・に再結成されます。

これ以降をニューベイシーと呼ばれ、カンザスシティージャズの伝統をベースに、現代風のモダンなアレンジが評判となり、第二期黄金期を築きます。
後半は、そんなニューベイシーから数曲お届けしましょう。

まず後半のスタートは、典型的なニューベイシーサウンドと呼ばれている『Shiny Stockings』です。
どうぞお楽しみください。」

健作はゆっくり会場を見渡したが、典子がいるのかどうかよく分からない。
『やっぱり典子さん、来てくれなかったのかなぁ・・・
智子さんもいないみたいだし・・・修のやつがっかりして落ち込まなきゃいいけどなぁ・・・
おっと、集中、集中! 来た人たちに感動を持ち帰ってもらわなくちゃ!』

曲は、2曲目、3曲目と続き、あっという間に最後の曲が終わった。
鳴り止まぬ拍手の中、心地よい疲労感に浸りながらバンドのメンバーは立ち上がると会場に向かって一礼した。

「アンコール、アンコール、アンコール・・・」聴衆もまた心地よい感動の中で手をたたきながら声をあげている。
健作は、灯りの戻った客席を見渡すと、隅の一番暗いところに典子と智子は一緒に座って手をたたいていた。

健作は、思わず自分のほほが緩むのを感じると、マイクを手に取った。
振り返って皆にアンコール演奏の目配せをすると、修もニヤニヤ笑っている。

「皆さん、ありがとう!」健作がマイクに向かって話し始めると、会場は水を打ったようにシーンとなった。
「本日は、お忙しいところ、貴重なお時間を割いてお越し頂き、ありがとうございました。
外は寒風吹きすさぶ中、この建物の中は皆さんの熱気でヒートアップしています。」

少年.jpg会場からは、口笛が鳴り、拍手が沸き起こった。

「さて、皆様の熱烈なるアンコールにお答えしてお送りする曲は、このヒートアップした熱気を心地よい余韻へと変えるためにお送りしたいと思います。
チャックマンジョーネのフリューゲルホルンをフルートでフィーチャーした『 Feel So Good 』です。
健作はアルトサックスをフルートに持ち替えると、修に目配せした。
修はスティックをたたいて合図を出すと、曲は始まった。

 

 

健作はリズムとメロディーの中に埋没していくと、いつしか大草原を渡る爽やかな風となり、蒼穹の天へと駆け昇っていた。
聴衆の拍手と口笛の音で我に返ると、演奏は終わっていた。

・・・続く


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コメント 19

タイド☆マン

jazzについては全くの無知ですが
山下達郎さんの「スパークル」の間奏に
サックスのソロ演奏があります
そのサックスの音色がとても好きです
機会がありましたら是非・・☆
by タイド☆マン (2012-02-11 03:13) 

タイド☆マン

>トレンチコート
米軍の放出品のようです 
by タイド☆マン (2012-02-11 03:16) 

リック

お祝いのコメントを頂き、恐縮です、とっても嬉しかったです、有難うございました^^
by リック (2012-02-11 05:29) 

BPノスタルジックカーショー

おはようございます。

アトランタ五輪の後にいったバーを思い出しました。
by BPノスタルジックカーショー (2012-02-11 05:33) 

rtfk

お早う御座います^^)
学生時代にタバコの煙で白く霞んでいる
ライブハウスで演奏したことを思い出しました(涙)

by rtfk (2012-02-11 06:22) 

manamana

ライブの熱気が伝わってきます。
そして、二人も来てくれて、続きがますます楽しみです。
by manamana (2012-02-11 06:54) 

YUTAじい

おはようございます。
ライブ・・・会場の盛り上がり、一体感良いですね大昔ですが。
by YUTAじい (2012-02-11 07:26) 

レイリー

ライブハウスの臨場感、素敵ですね~
自分は少しだけハードロックをやっていた時期がありますが、あの盛り上がりはイイですね (^^
by レイリー (2012-02-11 07:40) 

風来鶏

最近ディアゴスティーニからリリースされている、「ブルーノート・ベスト・コレクション」を買い集めています。
マイルス・デイヴィス、ハービー・ハンコック、ソニー・ロリンスと揃って、次回2月21日(火)発売はアート・ブレイキーです(^o^)/
by 風来鶏 (2012-02-11 09:49) 

馬爺

JAZZはあのテンポのよさが大好きですね、私はどちらかというとフュージョンタイプのほうが好きなんですがドライブの時にはアップテンポの曲をがんがんかけて走っております。

by 馬爺 (2012-02-11 12:24) 

キャスリーン・ケリー

会場にトリップしちゃいました^^  わたしはピアノの発表会と校内の合唱コン以外で 楽器を演奏したことがないんですけど 女子高時代に フォーク部の友達に頼まれて 自分で書いた楽譜で伴奏をしたんです その類のステージに上がったのは最初で最後。 こういうstoryを読んでいると こういうの やっておけばよかったってほんと思いますね
by キャスリーン・ケリー (2012-02-11 12:26) 

mwainfo

「日本から男の子を育てる場所が消えていく」、主婦の友新書から出ている本書は、ボーイスカウトの凋落が、日本人の心をなくしてしまった、と書いています。車も欲しがらず、多分、Willys M38 にも興味がなく、草食系を決め込む若者たち、ボーイスカウトの精神を知ってもらいたいですね。
by mwainfo (2012-02-11 15:45) 

ナビパ

火を囲んだお写真 何か楽しげです。
拝読後の余韻がいいですね。^^
by ナビパ (2012-02-11 20:01) 

Studio-Oz

こんばんは、はじめまして

ご訪問、nice!ありがとうございました!
どうぞ宜しくお願いいたします。

あまり詳しくないのですがjazzは好きです!
近所にjazzのLiveHouseがあるのでたまに立ち寄ったり・・・
ふとソノ風景を思い出しました。。。
by Studio-Oz (2012-02-11 20:05) 

ちょいのり

典子さんと智子さんは、一体、どんな繋がりが出てくるのかきになりますですねえ^^

by ちょいのり (2012-02-11 23:31) 

me-co

ジャズ、お詳しいですねー@@MCの下りは、ちょいとかじったくらいでは書けませんよ・・・
by me-co (2012-02-11 23:44) 

そらへい

健作の家の車が51年製と言うところ
引っかかりました。
by そらへい (2012-02-12 14:30) 

Azumino_Kaku

こんにちは、
フルートで聞くFeel So goodもまた良いでしょうね。

by Azumino_Kaku (2012-02-12 17:24) 

sig

小説に写真、演奏が一体となって、雰囲気満点。
駅員3さんのマルチメディア・ノベルに乾杯です!
by sig (2012-02-14 14:07) 

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