山口市に残る煉瓦構築物1 [煉瓦研究ネットワーク東京]
前回山口の煉瓦探訪の触りをお伝えしたが、時間が経ってしまったため、改めて書き記したい。
その日の任務が予定より早く終了すると、ホテルの部屋に戻って制服を脱ぎ捨ててシャワーを浴びた。
疲れを洗い流すと、まだ時間は2時半。
せっかく空いた時間は有効に使おうと、持参したPCをネットに接続し、情報の収集を始めた。
するとホテルから2km弱のところに『小郡文化資料館』を発見。
まずここに行けば、何かしら煉瓦の情報が手に入れられると思い、Nikon 1を手にするとホテルの部屋を飛び出した(本日の写真は、すべてNikon1 V2での撮影です)。
JR山口線で一駅の『下郷駅』まで行くと、一路文化資料館へと向かった。
その途中で見つけた一部煉瓦造りの建物が前回も紹介した次の写真である。
小口と長手の列が一列ごとに積まれていて、角の処理に七五分の煉瓦を使用していることから、所謂オランダ積みである。
最初から非常に期待させる煉瓦建物の発見に心躍らせながら文化資料館に行くと、早速展示内容を観覧させていただいた。
二階建ての建物はこじんまりと纏まっていて、展示スペースをぐるっと一周すると、最後に『山口市に残る鉄道施設』と題したパネルが2枚あった。
一枚は山陽本線に残るカルバート(水路トンネル)と橋台、そしてアーチの部分のみ煉瓦造りで他の部分が石造りの清水橋梁を紹介している。
もう一枚は、山口線の木戸山トンネル、篠目駅給水塔、徳佐川橋梁、第一阿武隈川橋梁を紹介していた。
パネルの説明には具体的な場所は書き記されていないが、スマホで地図を確認すると、山口線の方は離れていて時間がかかりそうだ。
山陽本線の方は場所が特定できないが、山口市内の山陽本線で『橋台』・・・川を超えるとすれば、大きな川は椹野川しかない。
しかも文化資料館から歩いていける距離。時計を見ると16時近くになっていて十分な時間もなく、迷わず椹野川に向かうことにした。
しばらく歩くと、何やら隧道が見えてきた。
単なるコンクリート造の隧道のようにも見えたが、水路と歩道が一緒になっていて、頭の中で警告灯が点灯し始めた。
近づいていくとビンゴ!!
これが文化資料館で紹介されていたカルバートである。
前後はコンクリートで補強、あるいは継ぎ足されているため、外からは判り辛いが中に入ってみると、そこは間違いなく煉瓦造りのカルバートである。
次の写真はコンクリートで継ぎ足された部分であるが、まるで橋台のようにRがつけられている。
コンクリートで継ぎ足される前は、カルバートの入口がどのような造りになっていたのか、興味は尽きない。
通常隧道やカルバートの胸壁と坑道のつながりは90度の角であり、Rはつけないはずである。
《4/13追記》何回も写真を見ていてふと思いついたのだが、Rの付いている部分は水路であり、水の流れを受け流すためにRがつけられたのだろうか? だとすると、Rがアーチまで続いていたのかどうかは、コンクリートを剥がしてみるか、施工図面を見なければ判らない。
煉瓦造の部分は複線の幅があることから、1928年(昭和3年)に山陽本線が単線から複線に拡幅された時のものと推定される。
上の写真をご覧いただくとお判りのとおり、非常に雑な積み方となっている。
長手積みの部分は縦のラインがランダムに積まれていて、その長さ合わせに細長い煉瓦が使われているように見受けられる。
通常の長手積みは、上下の段で半分重ねていくため、一段おきに縦のラインが揃うのが普通だ。
さらに次の写真をご覧いただくと、垂直部分はイギリス積み、アーチ部分は長手積みとなっているが、なんとイギリス積みから長手積みに変わる高さが、左右で一段ずれている。
カルバート(水路トンネル)として作られたため、見た目は無視して手を抜いて作られたのだろうか?
その後、そのカルバートを利用して一部歩道を増設したのかもしれない。
あるいはアーチの形が左右非対称にも見えることから、最初から水路+歩道として設計して作られたのか・・・
図面が残っていれば、ぜひとも見てみたいものである。
このカルバート、実は一度離れて次の煉瓦構築物を探しに行ったのであるが、どうしても残像に違和感が残っていて、再度帰り道に寄っている。
二度目に立ち寄った時に、左右非対称に気が付いた。
このカルバート、前後二回合わせて30分以上眺めていたであろうか。
地元の人が頻繁に通るため、生活道路の一部なのだろう。
隧道の中で煉瓦を飽きずにじっと見ている人間は、さぞかしおかしいもの、あるいは怪しいものに写ったに違いない。
今までの経験から、人が近づいてくると、知らない人でも必ず挨拶をするようにしている。
すると、京都の琵琶湖疎水探訪の時もそうであったように、挨拶から話しが弾み地元情報が手に入るのが常だからである。
何よりも挨拶することにより、「怪しい人」から「面白い人、変わった人」に変わるのである。
この日も数人の人と挨拶をし、時候の話しをしたが、残念ながら特段の情報を手に入れることはできなかった。?
文化資料館のパネルではもうあと2か所紹介しているが、この後3か所で煉瓦造りの構築物を見ることができた。
パネルで紹介されていた清水橋梁は発見できなかったので、紹介されていた以外に2か所の煉瓦構築物があったことになる。
しかしながら、この日見つけた煉瓦構築物を一回でご紹介するのは無理のようなので、この後何を見たのかは次回に譲りたい。
確かにコンクリートが継ぎ足された部分が、Rになってますね!
駅員3さんやちょいのりさんのブログを拝見させていただく度に、
煉瓦の奥深さを感じます(嬉)
by 唐津っ子 (2015-04-13 00:52)
うーーー
ひとりで、ここを通るのは、ちょっと怖いです。
小心者です。
by とし@黒猫 (2015-04-13 03:58)
レンガ造り、善し悪しが見えますね(^▽^;)
記事を読むようになり、丈夫さがよくわかります。
by green_blue_sky (2015-04-13 06:36)
煉瓦造りも、丈夫なものが多そうですね。
by まるたろう (2015-04-13 06:40)
煉瓦は奥が深いね。
これは是非、熊取の煉瓦館や田尻町の歴史館を見てもらいたい。
泉佐野の町家の途中にも少しあるし・・・
楽しみです。
by hatumi30331 (2015-04-13 06:45)
おはようございます。
奥が深くて・・・最近赤い煉瓦見掛けるとつい気になる様になって仕舞いました。
by YUTAじい (2015-04-13 06:53)
おはようございます^^
煉瓦もいろいろ難しいですね~婆の頭にはなかなか入っていかないわ。でも見ていて楽しいですよ、煉瓦は^^
by mimimomo (2015-04-13 06:57)
謎の多いカルパートですね。
by gen (2015-04-13 08:20)
さすが!の機動力ですね^^
こうしてみると日本各地に煉瓦の遺構がありますね。
一昔前には欠かせない建築資材だったのでしょうね。
角が丸く...興味深いです。
by orange (2015-04-13 08:39)
おはようございます。煉瓦造りの建造物を観ますと当時の事を思い浮かべてしまいます。^^;
by ソニックマイヅル (2015-04-13 09:47)
ひとつの隧道でも、いろいろ考察できて楽しいですね♪
地元の方と挨拶、コミュニケーションは良いことですね。見習わないと・・・(^_^ゞ
by 路渡カッパ (2015-04-13 10:59)
おはようございます、各地にはレンガ建築も多いようですね、震災にも崩れなかったぐらいですか強いのですね。
by 馬爺 (2015-04-13 12:27)
左右でずれがある理由が知りたいですね
意外と新米設計者の練習台だったりして・・・・^^;
by さる1号 (2015-04-13 12:35)
左右非対称の謎は地元の方でもご存じないのですね
簡単に解けないところが研究心を擽るのでしょうか。^^
by raomelon (2015-04-13 13:29)
水路と歩道が一体となった隧道、
一見するとふつうのコンクリート造りに見えますが、
中はこんなにも味のある煉瓦造りなのですね!
丁寧に積まれたアーチが本当に美しいです(^^)
by あおたけ (2015-04-13 16:18)
関東大地震にも耐えた煉瓦の建物があったと聞いて降りますが、煉瓦の文化は捨てがたいものがありますね。
by katakiyo (2015-04-13 16:41)
昔は家や隧道にトンネルなど煉瓦が多かったですね。
そう言う所を訪ね歩くのも昔が見えるようで楽しめますね。
by 旅爺さん (2015-04-13 17:44)
下郷、聞いたことあります。
by 夏炉冬扇 (2015-04-13 19:10)
狭い隧道の中に水路が!
なんか歩くと股間がスースーする
ような気がします。ちょっと怖ーい^^;
by 昆野誠吾 (2015-04-13 19:53)
山口市は室町以来の古い町ですね
浄瑠璃寺などへ行きたいですが、遠くて中々行けません
by koh925 (2015-04-13 20:26)
お仕事後に シャワー浴びて
ササッと 出発できるなんて若いなぁ(*´ω`*)
by だいず (2015-04-13 20:37)
煉瓦を知らなくても、いい感じの通路だと思います。初めてでも行きずりの人にあいさつ・・・いいですね。確かにいっぺんに親近感がわくから、いい情報も手に入るんですね。
by sig (2015-04-13 20:58)
知らない人でも挨拶する・・は良いことです。
話しがしやすくなりますね。。
煉瓦って奥が深いですね。。
by なんだかなぁ〜!! 横 濱男 (2015-04-13 21:23)
挨拶って気持ちイイ潤滑油ですね^^。
僕も心がけてます。
by DEBDYLAN (2015-04-13 21:53)
古い煉瓦造りの建築物、色々と歴史や特長が
あるんですね。
私なら、何も気にせず通過してしまうところ
ですが。
by takechan (2015-04-13 22:39)
おはようございます、コメント有難うございました。
ブログを見ていると、自分の目で見たくなるところがたくさん
出てきます。
煉瓦のトンネル良いですね、(伊豆)旧天城トンネルなんて
好きなところです。
by tarou (2015-04-14 07:27)
確かにここで煉瓦を何十分も眺めてると怪しい人です(笑)
でもいい雰囲気の水路ですね。
煉瓦の積み方…奥が深いですケロ
by るぐっちぃ (2015-04-14 07:47)
カルバートですか、覚えておきます。
僕も旅先では地元の方に挨拶するよう心掛けています。
無視される方もいますが、概ね好意的に対応して下さいます。
九州や四国では「仙台から」と言うと、かなり驚ろかれます。
by johncomeback (2015-04-14 08:51)
煉瓦構築物を見ている駅員3さんは、普段の穏やかな表情とは裏腹に目つきが鋭くなってるんじゃないかと想像します(^^;
by Aちゃん (2015-04-14 11:35)
歴史を感じます~
それにしても煉瓦の耐久力はスゴイですね(;゚Д゚)
by さくら君 (2015-04-14 12:57)
びびび!っときたのですね^^
>何よりも挨拶することにより、「怪しい人」から「面白い人、変わった人」に変わるのである
なるほど、たしかにその通りだなって思いました。
by リュカ (2015-04-14 14:26)
古き鉄道あるとこには煉瓦あり!ですよね^^
カルバートも橋台も。
カルバートってことは水路が先で後から歩道と鉄道が作られたってことなのかしら。
ここは今まで見たことある場所よりかなり異質ですね(逆に楽しいんですけどねw)
挨拶。大事ですよね^^
何度助けられ、何度情報をいただいたことか^^
by ちょいのり (2015-04-15 00:56)
おはようございます。
7月に大阪で講演会・・・オフ会との事ですね。
by YUTAじい (2015-04-15 07:00)
今日の記事でアップしたよ〜〜♪^^
by hatumi30331 (2015-04-15 07:57)
さ流石に山口ですね!
by ねじまき鳥 (2015-04-15 10:04)
駅員3さんの目にかかると、
当時の職人さんたちの状況が目に浮かんでくるようです。
職人さんもうれしいのではないでしょうか。
逆に手を抜いたところも見られてしまいそうですが(笑)
こういう所での挨拶は、
貴重な情報を得られることがあるので本当に大事ですよね。
by ワンモア (2015-04-15 11:42)
山陽本線の下をくぐるカルバートは見たことがありません。
椹野川近くで山陽本線を渡る時は、川の両側の踏切を利用していたのです。
機会があれば、カルバートを確認したいと思います。
藤本金物店の先代は、切手収集で新聞に載ったことがあります。
by yogawa隼 (2015-04-15 17:14)
駅員3さんの行動力に脱帽です。
こんな時にニコン1はフットワークよく行動出来て良いですね。d(^_^o)
by ナビパ (2015-04-15 17:20)
マンションのエレベーターなどで
知らない人と出会ったとき
まず挨拶をするのと同じ要領ですね。
by そらへい (2015-04-15 21:59)
昔の職人さんはいい仕事をしていましたね〜!
ちょいのりさんも頑張られている様で、外はいいな〜
by Hide (2015-04-15 22:13)
おはようございます、コメント有難うございました。
京都(宇治)の次は、奈良(室生)に移動して
お花見を楽しみました(^○^)
by tarou (2015-04-16 08:10)
7月の大阪オフ会、残念ながら行けません・・(;_;
高校のクラス会がその日に決定、でもそちらも行けるかどうか・・息子の事が落ち着いたら沢山時間が出来るので、その時はお相手して下さいね!
サソリ~~~食べたかったのにぃ・・・(;_;
by viviane (2015-04-16 09:21)
ありがとうございます。
そうです~今日は天気良いので、午後から散歩に
行く予定です。
by ryuyokaonhachioj (2015-04-16 12:05)
普段の生活の中に歴史も感じられる風景がいいですね。
きれいな形ですね。
クリへのコメントをありがとうございました。
きっと空から見つめていてくれると思っています。
ありがとうございました。
by isoshijimi (2015-04-16 16:02)
立派なカルパートというのですね年代物の煉瓦が更に良い感じです
by みぃにゃん (2015-04-16 19:58)
園と基礎の作業をした人がどんなことを考えていたのか、色々考えるとロマンが広がりますね。
ところでコメントいただいた件ですが、記事にも書きましたように、個人のお墓は普通25年契約です(もっと短い人もいます)。それ以上その墓をその人のものとして維持したい場合は子孫がお金を払えば延長できますが、特別な家以外はそういうことはほとんど無く、その後は墓は更地となり、他人の墓となります。だから、疑問を持たれたような問題は起こらないんですよ。
by めぎ (2015-04-17 20:09)
日本ではレンガ造りの建物は少ないですけど、
ブラジルでは2、30年ほど前まではレンガ造りの家が多かったです。
今はコンクリートブロックがほとんどですが。
by Loby (2015-04-17 22:29)
確かに、こういうところで煉瓦をじっと見ていたら、
変わった人と思われるかもしれませんね^^;。
by sakamono (2015-04-17 23:56)
只今、復帰準備の、niceの特打を行っておりますm(_ _)m
しかしながら、しっかりと内容は読まさせていただいております。
by suzuran6 (2015-04-18 09:33)
そうですね~
僕もツーリング先で知らない人にも挨拶してます。
地元のお話って楽しいですね♪
by てんてん (2015-04-18 11:17)
ブログ再開しました。宜しくお願いします。
by Silvermac (2015-04-19 09:08)
何気ない、普段見ている光景も、こんなにも奥深い歴史があったのですね。
by seawind335 (2015-04-19 22:59)