学生街の四季 シンガポール編4 [学生街の四季]
過去にアップしたシンガポール編は、以下のリンクからご覧ください。
⇒学生街の四季 シンガポール編2
⇒学生街の四季 シンガポール編3
健作はニューヨークで乗った飛行機の行き先は、HKGと表示されていた。
飛行機は、九龍城を掠めるように海に向かって高度を下げると、滑走路へと滑り込んでいった。
バスで尖沙咀に向かうとビジネスホテルに宿を確保して、スーツケースを開けた。
シャワーを浴びて着替えると、タクシーで香港中文大学の郭教授を尋ねた。
「郭先生、アメリカから戻りました。」
「おー健作君、お疲れ様でした。4年はずいぶん長かったね。あちらはどうだったかな?」
「はい、今振り返ってみると、無我夢中の4年間で、あっという間に過ぎ去ったような気がします。」
「そうですか。あっという間に過ぎ去ったということは、充実した4年間だったのでしょう。
そうそう、今晩水上レストランでわが研究室のパーティーをやるんだが、君も参加しないかな?」
「はい、喜んで。」
「うむ、4年も経って研究室のメンバーの顔ぶれもずいぶん変わったから、ちょうど良いだろう。
今回シンガポールからの留学生も入ったことだし、新しいメンバーと親交を深めるにはちょうどいい機会だ。それじゃあ18時に珍宝でお会いしよう。」
健作は研究室を辞すると、香港市内にもどり、あてどもなくぶらぶらして時間をつぶした。
18時少し前に水上レストランの前に着くと、目前の湾内に浮かぶレストランは綺麗にイルミネーションで飾られて、中央には『JUMBO 珍宝』というネオンサインが輝いている。
海への映りこみが、より水上レストランを大きく見せている。
レストランへの渡し舟に乗ると、漆黒の海を渡る潮風が心地よい。
船を下りて入り口に行くと、郭教授と学生たちはもう到着している。
「先生!」健作は郭教授に声を掛けると、その場にいた学生たちも振り返った。
その瞬間、学生たちの中から痛いような視線を感じた。
健作はびっくりしてその視線をたどると、その先に立っていたのは・・・
「健作・・・」「リリー・・・」二人はしばらく見つめあったまま言葉を失ってしまった。
神様って、本当にいたずら好きですね。
この時代にラインとかe-mailがあったら、健作君とリリーさんのその後の運命は、あるいは変わっていたかもしれません。
健作君は、フィールドワークが大好きで、じっとしていることの出来ない性分だったのでしょう。
目の前にあるものに一生懸命で、とても人の気持ちを汲んであげられるような余裕は無かったのかも知れません。
この後、もう少し色々な展開があり、「泰山木 回顧 学生街の四季より」に時空は続きます。
さらに「泰山木 回顧 学生街の四季より」のラストシーンで健作はアメリカに再び発つことを表明していますが、その後のお話のあらすじは、概次の通りです。
数年後、健作は郭教授からある知らせを受け取ったとき、南アメリカに滞在していてシンガポールに戻ることはかないませんでした。
後年健作はシンガポールを訪れると百合の花束を買って、とある場所を尋ねたそうです。
その時に見た夕日は、遠い昔のあの日に見た夕日となんら変わりはありませんでした。
上の写真は、インドネシアのスマトラ島中部の穀倉地帯で撮ったものです。
昔の写真をひっくり返したのですが、残念ながらシンガポールの海に沈む夕日の写真は出てきませんでした。
JUMBOの写真は昔のものですが、Googleで画像検索すると似たような景色が出てくるので、今でもあるのでしょう。
季節はこれから泰山木が芳しく見事な花を咲かせる季節になっていきますね。
一年で一番切なく感じる季節でもあります。
以上シンガポール編はこれでおしまいにしたいと思います。
登場人物など、すべてフィクションであることを申し添えておきます。
なお、未だ途中で止まってしまった「学生街の四季本編」とは、繋がりません。
昔は今のように簡単に連絡がつかなかったですもんねぇ(*_*)
百合の花束を持ってとある場所・・・悲しい想像をしてしまいました(T_T)
by ニッキー (2014-04-22 00:21)
なるほど~四季編もシンガポール編も根底では駅員3さんの体験談が盛り込まれているけれど、
シンガポール編のほうがより駅員3さんの過去に近しいお話なのかなあ^^
by ちょいのり (2014-04-22 00:46)
少し退色し始めた写真の色が寂しさを感じさせます。
そうですね。あの頃、E-MailやSkype..Face Timeが使えたら..と思います。
by orange (2014-04-22 01:21)
おはようございます
>e-mailがあったら、健作君とリリーさんのその後の運命は、あるいは変わっていたかもしれません。
確かに、その点は思うことありますね。
by すー (2014-04-22 04:30)
外国をあちこち旅して歩くと想い出も沢山出来ますね。
by 旅爺さん (2014-04-22 05:14)
おはようございます。
想い出・・・自分へは感無量ですが、息子達は迷惑そうで。
そろそろ整理しないと(笑)。
by YUTAじい (2014-04-22 06:30)
綺麗なネオンですね。沈みゆく夕日がどこかさみし気に感じます。
by ナビパ (2014-04-22 06:38)
あの時代はあの時代で・・・・
良かったんですよね。^^
今のようなメールもなく・・・
全て運命に任せてたあの頃・・・・
懐かしい・・・。
by hatumi30331 (2014-04-22 07:46)
あの頃、Skypeやmailが有ったなら・・きっと今の生活は無かったと思います
ずっとシンガポールに住んでいたかも・・
私も仕事で約2年、シンガポールに住んでいました
by viviane (2014-04-22 08:04)
駅員3さん、
リリーさんとの再会と、そして、数年後の永久の別れでしょうか。
日曜日、焼香のために熊本からいらした来客の方と、妻との昔のアルバムを見ていて、新婚旅行で訪れた香港の写真辺りに、ド派手なJUMBOの文字の一枚があって、何処だろう?
最初はディズニーの写真が紛れ込んだかと思いましたが、前後の写真から、香港だとはわかりました。
駅員3さんのお陰で、百万ドルの夜景を見てから訪れた水上レストランだったコトを思い出しました。
その後はわかりませんが、2000年9月には健在でした。
by kiyo (2014-04-22 08:30)
おはようございます^^
むむー悲恋に終わりましたか・・・
by mimimomo (2014-04-22 08:32)
おはようございます。私ももう一度シンガポールに行きたいです。^^;
by ソニックマイヅル (2014-04-22 10:17)
ありがとうございます。
水上レストラン、行ったことないので~夜景を観ると
綺麗でしょうね。
by ryuyokaonhachioj (2014-04-22 10:20)
メールやLINEは便利ですけど、
恋愛に関しては
ストレート過ぎる、というか、何というか。
(↑うまく言えません。。。スミマセン 汗)
by ikuko (2014-04-22 12:48)
運命のいたずらって「物語」を作りますね。
日常の中にも沢山潜んでいて、ある時ふっと
姿をあらわし驚かせる。人生に彩りをそえるように^^
by 昆野誠吾 (2014-04-22 17:20)
今晩は。
町おこしのブログやっと更新しました。ぜひ。
by 夏炉冬扇 (2014-04-22 18:24)
何やら色んな事を想像してしまう内容ですが・・・
今では様々な手段で連絡が取れる時代になりましたが、
そういう手段がなかった時の「出会い」には重みがあったように感じますね。
by 銀狼 (2014-04-22 18:44)
シンガポールはレストランが並ぶ湾の
ボートキーが印象に残っています、妻と一緒の個人旅行でした
by koh925 (2014-04-22 19:33)
今は何処にいても、追いかけられるように、
携帯に連絡が来ちゃいますね。
遠く離れていても、すぐそばにいるような。。。
by なんだかなぁ〜!! 横 濱男 (2014-04-22 20:42)
「カレーショップナイアガラ」の記事がたくさんなので、未だ全部を読めていません。
時間がかかりとは思いますが、気長に読むつもりです。
メーテルさんもおられるのですね。
銀河鉄道999が大好きでした。
by yumeyunta (2014-04-22 23:37)
そうですか・・・
>百合の花束を買って、とある場所を尋ねた
なんですね・・・切ないですね。
by あざみ (2014-04-22 23:46)
携帯とかメールとかで便利になりましたが、その分、サプライズやドキドキすることが減りました(悲)
by 唐津っ子 (2014-04-22 23:55)