東京の坂と橋 四方山話70 地図 [東京の坂と橋]
地図といえば、日常生活の中で必要欠くべからざるものですね。
車で知らないところに行くときは、カーナビは威力を発揮します。
カーナビの無い時代は地図帳を助手席において、苦労したものです。
さて、そんな便利な地図ですが、その歴史をちょっと覗いてみましょう。
日本における記録の中で初めて『地図』の記載が登場するのは、平安時代初期に編纂された『続日本紀』です。
続日本紀の記述の中に「天下の諸国をして国郡図を造進させる」とあるので、この頃には地図は誕生していたことと推測されますが、残念ながら現存しません。
もし見つかれば、国宝物ですね。
正倉院の御物の奥から奈良時代の地図でもでてくれば一大発見となることでしょう。
実態の把握できる日本地図として最古のものは、805年(延暦24年)に下鴨神社に奉納された『行基図』であるとされていますが、現存するものは江戸時代の模写です。
さらにこの行基図の模写は、延暦年間には無かった『加賀国』が記されており、信憑性にかけるものです。
そのほか様々な『行基図』やその模写が残されていますが、いずれも信憑性にかけるものが多いようです。
江戸時代になると、今でもよく目にする『江戸切り絵図』が刊行されますが、これなどは住宅地図の元祖とでも言うべきものでしょう。
上の切り絵図をご覧いただくと、いくつか疑問がわいてくることと思います。「なんで名前があちこち向いているんだろう。」・・・記されている名前が天地逆だったり、横向きだったり統一性がありません。
「名前の頭に■が付いたり、●が付いたり、はたまた家紋がついたりしてるのは何の違いがあるのだ?」
江戸切り絵図のルールを知ると、この地図を見るのも一つ楽しくなってきます。
まず、名前があちこち向いているのは、「表門のある方を頭にして名前を記す」というルールがあるんです。
だから、絵図をみると、どの位置に入り口があるか一目瞭然ですね。
次に
家紋のついた屋敷が上屋敷
■のついた屋敷が上屋敷
●のついた屋敷が下屋敷
というルールがあります。
さらに、土地に塗られた色により
白色・・・武家屋敷
赤色・・・寺社
鼠色・・・町屋
水色・・・堀、川、池など
緑色・・・森、土手、馬場など
黄色・・・道、橋
となっています。
いかがですか、ここまで知ると、切絵図を見るのが楽しくなってきますね。
注意深く見ていくと、鼠色に塗られた町屋には町名が記されていますが、武家屋敷には住所らしき記載の無いことに気づくことでしょう。
これは、武家屋敷には住所は無かったということです。
江戸時代後期の1800年代になると、伊能忠敬による日本地図が作られたことは、皆さんよくご存知の通りですが、シーボルトは、この日本地図の一部を持ち出したことをきっかけに、国外追放となります。
つまり、『地図』は軍事戦略上非常に重要なものでした。
明治になると地図を管轄するのは、陸軍の中に陸地測量部(当初は参謀本部間諜隊と称しました)ができて、正確な日本地図を作成します。
当時一般に公開された地図は、わざと戦略上重要な地点や建物などを間違えて作成したものを公開していたくらいです。
第二次世界大戦後陸軍陸地測量部は、『国土地理院』と名を変えて現在に至ります。
現代の住宅地図は、全国各地にその出版社がありますが、中でも一番多く目にするのが、九州は福岡に本社を置くゼンリンでしょう。
ゼンリンは、別府の温泉街の観光ガイド図を作ったことから始まったという逸話は、NHKのプロジェクトXで取り上げられて、皆様もよくご存知のことと思います。
社名の『ゼンリン』は、「地図は平和でないと作れない。隣近所や隣国と親しくしなければならないから、善隣友好が大切だ」という思いから付けられたそうです。
2011年3月に発生した東北地方太平洋沖地震では、東北地方の街の姿が一変してしまいました。
ゼンリンは、同年9月に調査員80名を岩手、宮城、福島、茨城、千葉に派遣して、対象5万戸の調査を2週間かけて調査完了し、2011年中に震災後の仮設住宅を含めた住宅地図を刊行しました。
仮設住宅の表札の出ていないところは、直接住人から聞き取り調査したということですから、内容は正確なものでしょう。
ゼンリンが住宅地図を更新するのに要する人員は、年間延べ28万人にも及ぶと聞きます。
国土地理院の地形図等をもとに調査したデータを加えて作成されますが、このような住宅地図は、世界で日本だけしかありません。
そんな住宅地図も、眺めてみるとなかなか面白いことが見えてきます。
・・・つづく
江戸切絵図は、よく観るのですが、名前の向きは初めて理解しました。ありがとうございます。
ゼンリンの地図は、ゼネコン入社1年目に部署で見まして、腰を抜かすほど驚きました。実家の、出前に超役立ちましたが、ですね。延べ28万人の成果とは、さらに驚きました。
by 足立sunny (2013-12-23 01:54)
「表門のある方を・・」
謎が解けました ありがとうございます☆
by タイド☆マン (2013-12-23 03:54)
おはようございます
面白いですね・・・よく考えられていますね!
by すー (2013-12-23 04:34)
平屋で一区画1軒ならこのような地図は可能ですね。
比較的早い時代から複数の住人が一つの地番に暮らしている場所では書き方に困りますね。
日暮れて路地に迷い込むと中世の町並みが見えてくる..モーツァルトが、ベートーベンがこの部屋に居たのかと思うとそれも不思議な感じがします。
by orange (2013-12-23 04:46)
とても勉強になりました。ありがとうございました。
by takenoko (2013-12-23 04:50)
おはようございます。
同じ物が実家に・・・大変勉強になりました。
改めて見直しを、して観ます。
by YUTAじい (2013-12-23 05:37)
自分がいま住んでいる場所が明治の頃どのような地形だったのか
調べたことありますが楽しい時間でした。
by katakiyo (2013-12-23 06:29)
地図を見るのは好きですが
江戸切絵図の見方がいまいち分からなかったので
勉強になりました。
時代物の本を読む時も楽しめそうです。ありがとうございました。
by PENGUIN (2013-12-23 06:31)
切り絵図・・・面白いですね。
一度ちゃんとじっくり見てみたいです。^^
by hatumi30331 (2013-12-23 06:41)
古い地図を見るのはロマンがありますね
私も見るのが好きです
by tochi (2013-12-23 07:07)
お早うございます。続きが気になります。^^;
by doudesyo (2013-12-23 07:26)
地図を作るほうをやってみたい…(´σ`)
とくに長崎県長崎市高島3000番地の地図…(-_-)ニヤリ
by 下総弾正くま (2013-12-23 08:24)
おはようございます^^
地図見るの大好きなわたくしです^^
江戸切り絵図なんてヨダレガデソウ~~~
by mimimomo (2013-12-23 08:50)
現代でも地図の作製は凄く手間がかかっているのですね
江戸切り絵図、表記ルールがよく考えられていますね
名前の向きの件はなるほどと思いました
by さる1号 (2013-12-23 09:45)
おはようございます、
江戸の地図はよくテレビでも見るんですがなるほど門の位置に向かって名前が書かれているとは道理で向きがまちまちなんですね。
凄くためになりました。
by 馬爺 (2013-12-23 09:57)
江戸切り絵図って、たくさんの情報が詰まってたんですね~(; ̄ー ̄)…し・知らにゃかった…
by てんてん (2013-12-23 10:00)
おはようございます。なるほど、地図の見方表門の向きの関係で名前の向きが違うんですね。楽しくなります。^^;
by ソニックマイヅル (2013-12-23 10:02)
こんにちは。
大手町とか、皇居に近いところには、江戸時代の地図が掲示されている場所ありますね。
昔は、このへんは、こんな感じだったんだ、へぇー と、思って見ています。
歴史を、じかに感じることができます。
by とし@黒猫 (2013-12-23 10:06)
「江戸切り絵図」、勉強になりました。
字の向き、、特に勉強になりましたね。。
by なんだかなぁ〜!! 横 濱男 (2013-12-23 10:14)
お早うございます。
伊能忠敬200年祭で測量体験しましたよ。
by 夏炉冬扇 (2013-12-23 10:25)
ゼンリンって、そういう由来の社名なったんですね。
なんかちょっと感動。
by よーちゃん (2013-12-23 10:33)
だからカラフルなんですね~
勉強になりました
by (。・_・。)2k (2013-12-23 11:29)
地図好きなので、大変興味深く読ませていただきました。
ゼンリンの社名の由来知りませんでした、勉強になったなあ(^^)ニコ
by johncomeback (2013-12-23 11:33)
地図もチーズも好きな私ですが、特に鉄道地図が好きです。
昔、鉄ちゃんだったので毎日のように眺めてました(^^;
by Aちゃん (2013-12-23 14:39)
本日も 貴重なお時間を頂いてのご来訪、ありがとーーございました^○^
お車、メッチャかっこいいでっす!!
by お茶屋 (2013-12-23 16:12)
ずっと「なぜゼンリン?」と思っていたのですが、
ようやく謎が解けました^^
by 銀狼 (2013-12-23 16:23)
私も江戸切絵図を持っています
時々眺めては東京坂道散歩の参考にしています
by koh925 (2013-12-23 17:49)
人文社「江戸時代小説はやわかり」という冊子を、図書館から借りています。巻末のスーパー索引が、圧巻でぇ・・・あります。おもしろいですね。
by hanamura (2013-12-23 19:38)
こんばんは、
江戸時代の地図、興味深いですね。
水道橋、水戸殿・・お寺もずいぶんありますね。
by Azumino_Kaku (2013-12-23 20:00)
地図を見るのは大好きです
昔は、国土地理院の地図を見て
知らない場所の地形を想像して
撮影に行ったものです。
地図を取り巻く状況は今や激変していますが
やっぱり人の手が作り出した地図
(地図に限った事じゃないですが)
が、一番だし
これからも、有り続けなければならないと
思います。
by FTドルフィン (2013-12-23 20:41)
すばらしい解説で、とても参考になります。カーナビを使う程遠出をしない私は、ゼンリンさんに大変お世話になっております。
by sig (2013-12-23 21:38)
「ゼンリン」って名前はそういう想いからつけられたんですねぇ(^^♪
住宅地図、見てると面白いですよね(^_-)-☆
by ニッキー (2013-12-23 21:39)
学生時代、夏休みに「ゼンリン」さんの地図調査のアルバイトをしました^^
裏口から入っていって犬に噛みつかれたり、千頭(本川根町)まで原チャリで3時間掛けていった思い出があります^^;)
by 風来鶏 (2013-12-23 22:42)
私も地図が大好きで興味深く読ませていただきました^^。
by 海を渡る (2013-12-25 06:36)
江戸切り絵図のルール、知りませんでした。
すばらしいものですね。
by そらへい (2013-12-28 18:26)