北海道の思い出 [学生街の四季]
愛車の姿を捉えると、何日も会えなかったような気がして、何故か暖かいものがこみ上げてくる。
イグニッション、オン!!
ギヤーのニュートラルを確認し、左足でクラッチを踏むと、右足でアクセルを数度パタパタさせてから、右足のつま先で床から飛び出しているスターターボタンを蹴った。
一発で勢い良くエンジンがかかって、気持ちよく回っている。
すぐにエンジンの回転は安定した。
前の方から車が動き始めると、前の車に続いて大きく開いた開口部から、明るい外に飛び出す。
記念すべき北海道の第一歩だ。
空はどんより曇っているが、潮の香りを含んだ空気はさわやかで心地よい。
健作は、先輩に書いてもらった地図を頼りに港近くのとある場所に向かった。
フェリー埠頭から走ること5分、漁港の駐車場に車を止めると、傍らの古い鉄筋コンクリートの建物へと向かった。
建物の入り口には、「マルトマ食堂」という看板がでている。
中に入っていくと、いかにも人のよさそうなお母さんがニコニコしながら出てきた。
「兄ちゃん、ごめんな! 今日はもう終わっちゃったよ!」
「ええ゛っ、東京から楽しみにやってきたんだよ。何か残ってない?」
「ごめんな。今日はもう売り切れだっ!」
「まぁ、急ぐ旅でもなし、今日中に札幌に着けばいいんだから、何か見つかるだろう。」
健作は後ろ髪を惹かれる思いで建物を出ると、車をスタートさせた。
駐車場を出て通りに出ると、すぐ道の反対側に「海の駅ぶらっと市場 食の館」と看板がでている。
早速駐車場に車を止めて、「ラーメン」と書いてある暖簾をくぐると、中は広い食堂街になっていた。
午後2時を回り、ランチのお客さんは引いたところなのだろう、健作の他に客は誰もいない。
「『北海道』とくればやっぱりラーメンを食べてみたいなぁ。」
数店舗の中から、ラーメン屋さんの前に座ると、すぐに水の入ったコップをもったお姉さんが出てきた。
「何にします?」
何も考えていなかった健作は一瞬答えに窮すると、お姉さんはメニューを健作に差し出した。
健作はメニューを受け取ったものの、中も見ようとせずお姉さんに向かって微笑んだ。
「お姉さんのお勧めは何?」
お姉さんは、健作の予期せぬ反応に一瞬びっくりしたようだったが、すぐに素敵な笑顔を浮かべた。
「やっぱり、海鮮ラーメンか、海鮮あんかけ焼きそばかな!?」
「了解! じゃあ海鮮ラーメンにしようかな。」
健作は勢い良く答えた。
「了解! 海鮮ラーメン一丁!」
お姉さんは、健作の言い方をまねると敬礼をした。
敬礼というのは一朝一夕でかっこよくできるものではない。
お姉さんの敬礼は決まっていた。
健作はお姉さんに自分と同じ匂いを感じると、答礼した。
お姉さんは一瞬「えっ!」という表情を見せたが、何も言わず厨房に入っていった。
隣のテーブルにエプロンを取りながら女性が腰を下ろすと、帰り支度をはじめた。
厨房からお姉さんが出てくると、隣の席の女性の前に海鮮あんかけ焼きそばをおいた。
「妙子さん、お疲れ様。」
「ちーちゃん、今日のまかないが海鮮あんかけ焼きそばとは豪華だね。良いのかい!?」
健作は横目でみると、湯気が立ち上りとても旨そうだ。
「そっか、あのお姉さん、ちーちゃんって言うんだ・・・」
次にちーちゃんが厨房から出てくると、お盆の上には海鮮ラーメンが載っていた。
健作の前にラーメンを置くと、さっと敬礼をした。
「海鮮ラーメン、お持ちいたしました!」
健作は答礼した。
「ちーちゃん、ご苦労さま。」
二人は顔を見合わせると大笑いした。
健作は熱々のラーメンと格闘を始めると、ちーちゃんは水の入ったコップを持ってきて妙子さんの前に座った。
しばらくちーちゃんと妙子さんは世間話をしていたが、やがて健作に声をかけてきた。
「どう、うちの海鮮ラーメンおいしいでしょう!?」
健作は熱々のラーメンが口の中に入って思うようにしゃべれない。
頭を縦に振りながらモガモガいった。
妙子さんとちーちゃんは、健作の様子が受けたのかひとしきり笑った。
「兄ちゃん、どこから来たんだい?」
妙子さんが声をかけてきた。
「東京からです。北海道をのんびり走りたくて、ついさっき苫小牧港に着いたんだ。」
ちーちゃんが椅子を健作の方に寄せた。
「一人旅?」
「ああ、そうだよ。」
「あんた自衛官でしょ!?」
「そういうちーちゃんは自衛官なんだろ?」
「うん、もう退官しちゃったけどね。
で、あんたは現役なの?」
「あ、いや僕は自衛官じゃないよ、マリーン。」
「えっ、ま・・・りーん?」
「アメリカ海兵隊だよ。」
「えっ、だってあんた日本人でしょ?」
「ああ、まぁ話すと長くなるんだけど・・・」
「ねっ、ちーちゃん、あんたこのお兄さんと一緒にドライブしてきたら!?」
「えっ、いや僕の車には屋根もドアもないから大変だよ・・・」
「ちーちゃん、タンデムだって平気だろ!?」
「あっ、いや、二輪じゃなくて四輪なんだけどね。」
「えっ、いったい何に乗ってきたの!?」
妙子とちーちゃんは、思わず窓から外の駐車場を眺めるた。
「えっ、なにあのジープ!?」
二人は入り口から外に飛び出していった
。
・・・つづく
このお話は、すべてフィクションです・・・念のため(^^)
今日は書き下ろして、まったく推敲していませんので、読みづらいところはご容赦ください。
あとで時間があれば、手直しします。
海鮮ラーメン。よい香りがして来そうです。
by orange (2013-10-04 01:10)
おー、北海道シリーズの回顧録って感じですね^^
実際にあった駅員3さんの出来事が、そのまま健作君に投影されているみたいでボクも思い返してみたり^^
後半の会話部分は少しくらいノンフィクションだったりしないのかなあ~w
by ちょいのり (2013-10-04 02:07)
おはようございます。
M君の第一歩・・・色々想い出されます、早く回復してくれると良いのですが。
by YUTAじい (2013-10-04 04:28)
おはようございます
回想シーンも織り込まれて面白いです(^_^)ニコニコ
by すー (2013-10-04 04:40)
フィクションと書いてありますが、旅の醍醐味は人との出会いだと思います。
by 斗夢 (2013-10-04 05:05)
海鮮ラーメンを勧めたお姉さんは素晴らしい^^)
by katakiyo (2013-10-04 05:30)
あーあ、・・・・頭からラーメンが離れなくなったので昼はラーメン決定です(笑
しかも海鮮ですか!?うわーますます(w
by t (2013-10-04 05:42)
ほんの一瞬の素敵なストーリーと
海鮮ラーメンに釘付けです(^m^)☆
by 獏 (2013-10-04 06:10)
ますますマルトマ食堂が気になります
来年こそは北海道だなー^^
by さる1号 (2013-10-04 06:16)
船から降りるときのあのワクワク感はたまらんです(´ω`)
by 下総弾正くま (2013-10-04 06:54)
おはようございます。
この先も楽しみですね^^。
by 海を渡る (2013-10-04 07:05)
海鮮ラーメン、おいしそうですね^^
by yukio (2013-10-04 07:11)
え〜〜?フィクション?^^
海鮮ラーメンが美味しそう〜〜♪(笑)
昨日は遊覧船に乗ってきました!^^
by hatumi30331 (2013-10-04 07:13)
おはようございます!
「フィクション」良く理解してますよ!!
by シラネアオイ (2013-10-04 07:53)
フィクションって妄想・願望の意味もありましたっけ?(笑)
どの様な展開になって行くのか楽しみですね。
by suzuran6 (2013-10-04 08:25)
旅の楽しみは人との出会いですね
続き楽しみにしています
by koh925 (2013-10-04 08:51)
おはようございます。また北海道に行きたくなってきました。味噌ラーメンの味が忘れられないです。\(^o^)/
by ソニックマイヅル (2013-10-04 08:55)
中々、面白い話しです。
続きを早く読みたいです。。
by なんだかなぁ〜!! 横 濱男 (2013-10-04 09:18)
ちーちゃん メッチャ気になります!
by (。・_・。)2k (2013-10-04 09:34)
こんな風に書けるのは楽しいですね、創作てのは難しいですがいつも見事です、これからの展開が気に成りますね。
by 馬爺 (2013-10-04 09:42)
ううっ
本当の話かと思って読んでました(・∀・)
by とし@黒猫 (2013-10-04 09:50)
健作さん 私も海鮮ラーメンご一緒してもいいですか?
by ゆうみ (2013-10-04 13:43)
やはりこういうストーリーが加わると、同じ土地でも違って見えてきますね~♪
by キャスリーン・ケリー (2013-10-04 14:18)
健作君の北海道シリーズですね^^
海鮮ラーメン、めちゃくちゃ美味しそうです(^O^)
が、やっぱりマルトマ食堂が残念です^^;
by ニッキー (2013-10-04 14:46)
初めてマルトマ食堂に行った時は、中国人の大行列で諦めました。
その後2度行って「ほっきカレー」「ほっき丼」「ほっきピザ」を食べました。
やはりお奨めはカレー、ほっきが5~6個分入っていると思われます。
by johncomeback (2013-10-04 15:39)
ノンフィクションかと思ってしまいますよね。
ラーメンの写真もあるし・・・
北海道で食べたラーメンは美味しかったです。
もう10年ぐらい前ですが・・・
by yoko-minato (2013-10-04 18:00)
ちーちゃんとの出会い、
これからの展開が楽しみです。
海鮮ラーメン美味しそう♪
by 美美 (2013-10-04 18:07)
旅は気さくな出逢い それが旅のスパイス
何気無いことが旅心を潤わせますね。d(^_^o)
by ナビパ (2013-10-04 21:08)
駅員3さん、
この展開もいいですね。
健作くんとM38君での北海道旅行の追憶。
良い作品になると思います。
帰りの涙の健作君が、函館の飛行場で智子さんとバッタリという展開も期待します。
by kiyo (2013-10-04 21:52)
出汁がギューって出てそうなラーメンですね^^
美味しそう・・・。旅って胃袋への誘惑が多くて
困っちゃいます。
by みずき (2013-10-04 23:55)
現実とフィクションの狭間って感じですね.
皆さん書かれていますが,海鮮ラーメン食べたいなぁ
by 唐津っ子 (2013-10-04 23:56)
ちーちゃんとの出会い、智子さんには内緒ですね^^;)
by 風来鶏 (2013-10-05 00:54)
コレは楽しみな展開((o(´∀`)o))ワクワク
by an-kazu (2013-10-05 11:05)
思わず海鮮ラーメンが食べたくなるような
臨場感のある表現ですね。
by そらへい (2013-10-05 21:21)
今晩は。
そろそろラーメンの季節です。
by 夏炉冬扇 (2013-10-06 18:56)