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学生街の四季 第2章《夏》 14 [学生街の四季]

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リビングでテレビを見ていた健作と、修は大笑いしていた。
テレビからは、若者数名がコントを繰り広げている。

左の寝室の扉が開くと、典子と智子が出てきた。
「賑やかだと思ったら、笑築過激団を観てたんですね。」
「えっ、松竹歌劇団?」健作は振り向きざま答えた。
「あ、あの東京の松竹歌劇団ではなくて、沖縄の笑築過激団です。
この人たち、沖縄ではとっても人気があるんですよ。」

修は立ち上がると
「あー、面白かった。名前までパロディーなのかな。」
「そうですね、さぁ、お買い物に行きましょう。
歩いていけるところにスーパーがありますから。」

路地を抜けると、パイプライン通りに出た。
「この道は、那覇軍港から、普天間や嘉手納まで油送管が埋設されていて、その上が道路になっているんです。
あ、見えてきましたよ。」
典子が指差す先には、オレンジ色の看板に白い文字で「Jimmy's」と書いてあった。
レンガ色のお店は、パイプライン通りと国道58号にはさまれて建っている。

冷房が心地いい店内に入るとさすが南国、果物売り場には、スターフルーツやマンゴーが並んでいる。
店内を進むと、ワゴンに山積みになっている缶詰を見つけると、修は手に取った。
「何この缶詰、コンビーフのでかい版?」
健作も手に取ると、
「あっ、これいつかおむすび造ってくれたやつだね!」
「そうですよ、これがランチョンミート・・・豚肉の缶詰です。」

智子も手に取ると、
「えっ、これが一缶198円なの? 東京のスーパーじゃ確か300円から400円位いじゃなかったかな。」
「ともちゃんよく知ってるのね! そう、東京じゃ高くて買えません。
今日は特売みたいだから、特別安いけど、普段200円ちょっとで買えるかな。」

「またランチョンミートのおむすび食べたいなぁ。」健作は典子に向かって訴えるような目をすると、
「はいはい、作りますよ。でも今晩は、ちょっと違うものを作ります。
今晩のご飯は、フーチバジューシー・・・ヨモギの炊き込みご飯と、ナス味噌にしましょうね。」

「コーヒーに入れるミルクは、これが美味しいですよ。」
典子が取り上げたのは、ミルクの缶詰だった。
智子が、典子から受け取るとしげしげと缶を見つめた。
「へ~、カーネルのミルクかぁ、東京じゃ見たこと無いなぁ。・・・あ、ここに小さい文字で『沖縄専用物資』って書いてある。」
「私もその意味はよく知らないの。でもとっても濃厚で美味しいのよ。」

「そうそう、牛乳も買わなくちゃ。」
典子が牛乳パックを手に取ると、みんなに見せた。
「この牛乳パックは、何ml入っているか知ってますか?」
修はその牛乳パックを取り上げた。
「えっ、1000mlに決まってるじゃん!!」
修は、牛乳パックの表示を探してパックを回した。
「げっ、946mlだって!!」
典子は、みんなにも表示部分を見せながら説明した。
「沖縄の牛乳は946mlなのは、ガロン計算だからなんです。
1000mlに一番近いのがクォーターガロン・・・946mlなんですよ。
もともと、この紙の牛乳パックはアメリカで開発されたもので、容量は950.6mlしかないんです。
内地では、この950.6mlの容器に1000ml詰め込むから、内地で牛乳パックを見ると、胴の部分が丸く膨らんでいるでしょう。」
智子は小さい容器を取り上げると、
「なるほど、この小さいほうは500mlじゃなくて、473mlなんだ。それにしても牛乳高いんじゃない?
美味しいのかな?」
売り場の牛乳は数種類うられていたが、いずれも230円~250円前後の値段が付けられている。
「そうですね、牛乳は内地のスーパーよりやや高めかな。なかなか濃厚で美味しいですよ。」

「そうだ、今晩飲むビール買っとこうぜ。」
修は、飲料売り場へと向かった。
「おっ、俺はこれにしようかな。ルートビアって読むのかな。輸入品だね。」
「俺はやっぱり沖縄に来たんだから、沖縄のビールにしとくよ。」
健作は、オリオンビールを取ると、典子も智子もオリオンビールを買い物籠に入れた。
典子は、ちょっと笑いをこらえるような表情をしたが、それを飲み込むと
「さあ、それじゃあ帰って晩御飯を作りましょう。」
といって、レジへと向かった。

帰宅すると、典子と智子はキッチンで晩御飯を作り始めた。
「何か手伝うけど・・・」健作は、キッチンに行って典子と智子の肩越しに声をかけた。
典子と智子が振り向くと、智子が右手を突き出した。
「お食事作りは、マネージャーに任せといて!!」

健作と修がテレビを見ていると、智子が呼びに来た。
「ご飯出来たわよ。」
キッチンに入ると、美味しそうな沖縄料理が並んでいる。
みんなが席に付くと、典子が料理の説明をした。
「これはゴーヤチャンプルーです。この四角い肉みたいなものが、さっきのランチョンミート。
そして、これがナス味噌。ご飯はフーチバジューシー。
あと、イカ墨汁作ったんだけど、ビール飲んだらよそってきますね。
さて、乾杯しましょうか。」

みんなは、ビールのプルトップを開けるた。
「そうそう、沖縄式の乾杯をお教えしますね。
掛け声が『カンパイ!』じゃなくて、『ハナハナハナハナ~』っていうんですよ。
花を散らしてにぎやかに・・・というような意味かな。」

缶をカチッとあわせると『ハナハナハナハナ~』と声を上げて缶を口に運んだ。
「ゲッェェッ・・・!!」
修は突然叫び声を上げ取る椅子から飛び上がった。
「何これ!! ・・・これビールじゃないよ。そ、そ、それにこの味・・・・トイレの防臭剤を・・・飲んだみたい。」
修は咽び、目から涙がでてきた。
それを見たみんなは大笑い。
智子は修の背中をさすると、修の飲んだルートビアを手に取った。
缶にはA&W ROOT BEER と書いてある。
缶の裏に張られたシールには、『清涼飲料水 原産国アメリカ合衆国』と書いてある。
智子は恐る恐る缶に口をつけると、
「えっ、これ美味しいじゃん。」と笑った。

「そう、ルートビアってビールじゃないんですよ。アメリカの炭酸飲料水です。
人によって、好き嫌いが極端な飲み物なんですよね。」
「ひどいなぁ、典子さん、知ってたんだったら教えてくれなきゃ。」
修はむくれたような表情をすると、典子は立ち上がって冷蔵庫から新しいオリオンビールを出してきた。
「はい、これをどうぞ。」
修はむくれていた表情が、オリオンビールを手にするとニコニコ顔に変わった。
「さすが典子さん、ちゃんと用意してくれてたんだ。」

健作はナス味噌に手を伸ばして、一口食べると
「これ、超うまい!!  おれナスが大好物なんだけど、こんな美味しいナス料理食べたの初めてだよ。
この炊き込みご飯も最高!」
「うんうん、これはうまいね。」修も舌鼓を打った。
「私沖縄にいる間に、ノリにしっかり沖縄料理の作り方を教えてもらうんだ!」

楽しい食事は終わってまったりしていると、健作は口を開いた。
「今日真栄田岬でさ、ノリのお父さんから『君の夢は何だ』って、聞かれちゃった。」
「へ~、それでお前はなんて答えたんだい?」
「音楽を通して一人でも多くの人に感動と生きる喜びを感じてもらいたい・・・って答えたよ。」
「素敵な夢ですね。」智子は感心したようにつぶやいた。
「お前の夢はどでかいなぁ。」修は椅子の背に深くもたれると両手を頭の後ろで組んだ。
「ああ、ノリのお父さんには、『夢は大きければ大きいほどいい』って言われたよ。」

みんなは、それぞれの夢を語りながら、夜は更けていった。


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orange

穏やかな南の風が吹いていそうなリビングの風景が楽しそうですね。
音楽とともに心和む雰囲気です。
なかなか生活感のある描写ですね^^
by orange (2012-11-24 00:40) 

銀狼

笑築過激団とは・・・
妙に興味をそそられるネーミングですね^^
by 銀狼 (2012-11-24 01:01) 

ちょいのり

今回もためになりました^^
牛乳の話もルートビアのくだりも^^
おいら、ほんとに沖縄って知らないんだなあ~
来年、おさらいしてきますねw

by ちょいのり (2012-11-24 01:04) 

キャスリーン・ケリー

りんけんバンドをBGMに読むと 余計に良い感じになりますね やっぱり^^
by キャスリーン・ケリー (2012-11-24 02:09) 

沈丁花

ミルクの缶詰懐かしいです!
風邪引くと必ず買ってきてくれた母を思い出しています。
何時までも子供の私〜(笑)
by 沈丁花 (2012-11-24 04:51) 

すー

おはようございます

何か、沖縄のスーパーに行ってみたくなりましたね。
by すー (2012-11-24 04:55) 

YUTAじい

おはようございます。
そうですね食文化またアメリカの影響で眼から鱗・・・改めて感じます。
by YUTAじい (2012-11-24 06:27) 

rtfk

沖縄のスーパーで物珍しそうに買い物したことを思い出しました(^^)
A&Wのルートビア 自分はけっこう好きですよ~☆

by rtfk (2012-11-24 07:35) 

リキマルコ

ルートビア癖があるけど、私は飲める人で~す!ちなみにドクターペッパーもOKです(o^-^o)
by リキマルコ (2012-11-24 08:37) 

koh925

笑築過激団のこと、知りませんでした
国道58号線に油送管が埋設されていることも
by koh925 (2012-11-24 09:18) 

kuwachan

ルートビア、一度経験しましたがもういいかな?^^;
皆さんおかわりしていて凄いな~って思いました。慣れでしょうか(笑)
by kuwachan (2012-11-24 09:23) 

me-co

それにしても沖縄に造詣が深い!
笑築過激団なんて知りませんでしたから・・・
SPUM、餃子タウンでは698円します=東京の方が安いんですね@@;
by me-co (2012-11-24 09:38) 

下総弾正くま

沖縄にはそんな過激団がΣ(゜Д゜;
見てみたい…(´σ`)
by 下総弾正くま (2012-11-24 09:45) 

yuzuhane

ルートビア、昔NYにいる妹を訪ねて行った時、てっきりビールだと思って飲んで、まるで違うものだったのでびっくりしたおぼえがあります。義弟によると肉体労働者の疲労回復のための飲みものなんだとか?…。もうこりごりです。
by yuzuhane (2012-11-24 11:26) 

ナビパ

笑築過激団楽しいネーミングですね。
実在しそうですが。。。(≧∇≦)
by ナビパ (2012-11-24 12:54) 

そらへい

沖縄は行ったこともなければ何も知識持ち合わせていないので
出てくる話がみんな珍しく、初めて聞くことばかりです。
by そらへい (2012-11-24 17:40) 

haku

うぅ~~っ
無性にオリオンビールが飲みたくなりました~ ^^;
by haku (2012-11-24 19:04) 

ソニックマイヅル

早く沖縄に行きたいです。^^;
by ソニックマイヅル (2012-11-27 11:52) 

風来鶏

内地の人間は、1000mlとか1500mlとか“ピッタリの数字”じゃないと、気が済まない人が多いんじゃないかな?!
昔の小型車の排気量は、1000・1200・1400・1600.1800・2000と200cc毎にクラスが分かれていましたが、1300や1500の排気量が出てきた時、「何か中途半端で嫌だ!!」と言う人がいましたよ^^;)
by 風来鶏 (2012-11-27 13:01) 

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